愛知名古屋出身の画家/写真家の下郷羊雄(しもざと・よしお 1907-1981)が1940年に発行した私家版写真集にして、シュルレアリスムの影響を色濃く受けた戦前日本の前衛写真の代表作のひとつ。メセム(サボテン)を、モンタージュ技法を用いて、ドアノブの上や屋根の上に浮かぶように配するなど、この多肉植物を奇抜で幻想的なオブジェへと転嫁させた。前半の写真図版10点は下郷羊雄によるもので、後半の11点は坂田稔、田島二男、稲垣泰三、佐野季雄、佐藤泰平ら、ナゴヤ・フォトアバンガルドの同人らによるもの。
下郷羊雄は、戦前戦後の日本シュルレアリスム運動を推進した瀧口修造や、マン・レイらを日本に紹介した山中散生らと交流を持ち、東京の前衛写真協会、関西の浪華写真倶楽部等と並ぶ日本の前衛写真グループのひとつナゴヤ・フォトアヴァンガルドを坂田稔、山本悍右、田島二男らと結成。名古屋写壇の地位を高めたことでも知られる人物。
リング綴じ。経年の黄ばみ。
下郷羊雄, 1940
200部 | 19x13cm | 21plates | b&w