ロンドン出身のアダム・ブルームバーグ(Adam Broomberg)と、南アフリカ出身のオリヴァー・チャナリン(Oliver Chanarin)の2人組アートユニットが、真面目なドキュメンタリー写真を見事にパラダイム転換してしまった作品集。
北アイルランド・ベルファストにある「The Belfast Exposed Archive」は、血なまぐさい北アイルランド紛争をドキュメントした写真を1万4千枚余りにわたり収蔵する。しかし近年までこのアーカイブは分類も不完全、且つ部外者が自由に閲覧可能だったそうで、研究者が分類のために丸いシールを貼ったり、市民が抜き取ったり、写真を引っ掻いて潰してしまったりと一種の無法状態だったという。
アダム・ブルームバーグとオリヴァー・チャナリンの二人は、この丸いシールが貼られた箇所を逐一抽出してゆく(その箇所には恐らく何の意味もなかったと思うのだが)。なぜシールが貼られたのか、丸い箇所以外の部分を想像する楽しさ、そして、丸く抽出された部分が偶然的に形作るアブストラクトな画像。もはやここに政治的思考は意味をもたない。
ハードカバー。背の下部が僅かに切れ。中身はごく良好。
Mack, 2011
初版 | 英語 | 23x21cm | 416pp. | 写真図版数196点 | モノクロ