
川田喜久治の”ヌード・ミュージアム”シリーズの限定30オリジナルプリント10点を収録した1984年新潮社刊行のポートフォリオブック。
「かねてから、私は世界各地にある美術館のなかから、眼の嗜好のおもむくままにヌード像を選んで写真にとり、新たにヌード・ミューゼアムとでも呼ぶべきものを作り上げて見たいという希望を抱き続けていた。」(川田喜久治)
中世/近代の巨匠によって描かれた裸体の名画の数々を川田喜久治が複写したものだが、カメラという機械越しに、これら絵画の持つ宗教性、神話やメタファーなどをきれいに剥ぎ取り、立ち現れたエロスを前に陶酔する川田喜久治の独特な視線の強烈さは、やはり川田が写真集「地図」の「原爆ドーム内部で消滅した人たちの残した天井一面のしみ」で見せたものと同一な気がする。
別綴じ冊子に澁澤龍彦によるエッセイ「オブジェとしての裸体について」などを収録。ニューシーガルG印画紙を用いたプリントにはいずれも川田喜久治の刻印、裏面に鉛筆でサイン/タイトル/エディション番号が記載される。プリント台紙もハーネミューレの高級紙を用いており、函も含めて構成する全ての素材が吟味されている。「渋谷 道玄坂2-18-11-331」でも知られる田淵裕一による装幀デザイン。
所収作品
プリントタイプ Gelatin Silver Print on Baryta Paper
プリントサイズ h505mm x w406mm
スリップケースに微小な傷が数箇所。本体は良好。輸送用簡易ダンボールは欠。
新潮社, 1984
限定30 | 56x45cm